1994 夏

2004年7月29日
改札を出て、家まで向かういつもの道。
西陽に染まった街。
風は止まり、蝉の声だけがやたらと耳に響く。
じっとりと汗ばんだ体に貼り付いた服。
時間さえも流れずに、どこまでもまとわりついてくるような気がした。

ふと足を止める。
橙色に染まった街が、地面が、空が、ゆらゆらと歪んでいた。
すべての物の輪郭がなくなってひとつの色に溶けていってしまうような…

蝉の声だけが、いつまでも頭の中で鳴っていた。
 
 
そして気付くと、アパートの前に立っていた。
 

10年前の夏の日。
 
 
 

…熱中症?

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